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東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)106号 判決 1969年4月04日

原告

株式会社武智工務所

原告

株式会社坂本組

代理人弁理士

斎藤秀守

斎藤侑

被告

日東工業株式会社

代理人弁護士

野玉三郎

主文

昭和三五年審判第四三号事件について特許庁が昭和四〇年八月二〇日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実《省略》

理由

原告らが本件特許の特許権者であること、本件審決がなされた経過および本件審決の要旨が原告ら主張のとおりであつて、審決は、その理由に引用し本件特許発明と同じであるとした「日、英、米、独、仏、加奈陀、伊、その他特許武智式基礎工について」と題する冊子の記載内容なるものを同冊子の第一図、第二図、第七頁、第四図、第九頁、第一〇頁、第一三頁、第七図、第八図、第一〇図、第三八頁および第一一図から認定した旨を明示していること、しかるに前記無効審判事件において被請求人に発送された審判請求書の副本には原告ら主張のもの二六枚が添付されていただけで、同冊子の第二図、第九頁および第一〇頁は送られて来ず、また、請求人である被告は審判請求書において――その後提出した書面においても――右第二図、第九頁および第一〇頁について具体的記載内容を明らかに示すことも、これらの記載内容に基づくことを明らかにした主張をすることもしなかつたこと、以上の事実は本件当事者間に争いがない。そして、<証拠>によれば、前記無効審判の請求においては、その請求書に、請求の理由として本件特許と同じ地盤改良法が出願前頒布された刊行物に掲載されて公知であると主張して、前記冊子そのものを添付して提出したものであるが、右請求の理由中には、右冊子の他の数多の図面および頁における具体的記載は摘記されているのに、当事者間に争いがないように、同冊子の前記第二図、第九頁および第一〇頁については格別何らふれられていないことが認められる。

二 そして、<証拠>を比照すれば、本件審決が、前記冊子の内容をなすものであるとし、本件特許の発明がそれと同一であるとしたものの内容からすれば、右冊子の第二図、第九頁および第一〇頁(とくに第九頁および第一〇頁)の各具体的記載内容が審決引用の技術思想の一部をなすものとしてこれを無視しえないものであることは明らかであり、これに反する資料はない。

三 以上の事実によれば、前記審判において右冊子の第二図、第九頁および第一〇頁は実質上審判請求書の内容の一部をなすものであり、請求人引用の技術思想を特定理解せしめるに必要な部分であるというべきであるのに、被請求人は、その送達を受け、答弁書を提出する機会を与えられなかつたことになり、したがつて、本件審決は、その手続において、特許法施行法第二〇条第二項、旧特許法第八八条第一項所定の被請求人に対する適法な審判請求書副本の送達がなされなかつた瑕疵があるというべきであるから、違法としてこれを取り消すのが相当であり、原告の本訴請求はその理由がある。<後略>(古原勇雄 杉山克彦 楠賢二)

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